黒田博樹は「199勝で引退してもいい」と言いました

2025.4.23(水) 

広島 7-1 ヤクルト マツダ 

この日の先発投手は大瀬良大地。

1回表、まっさらなマツダスタジアムのマウンドに向かう大瀬良に向かって、解説の天谷宗一郎が開口一番こう言いました。

天谷「大瀬良投手は誰よりもチームのことを考えている選手です」

そうだよな。天谷が言うと説得力あるよな。

私は10年前の「天谷落球事件」を今でもはっきり憶えています。天谷があれを落とさなきゃ、昨日で大瀬良大地はマツダスタジアム47勝目だったのです。

 

大瀬良大地

大瀬良大地。7回1失点。

調子は悪かったが何とか7回投げて今季初勝利。

前田健太を抜いてマツダスタジアム最多46勝目を挙げる。

 

私は何も天谷をクサしたいんじゃないですよ。

2015年4月7日の巨人戦。9回表、レフト天谷の落球から1対1の同点に追いつかれ、大瀬良は完封勝利を逃してしまいました。試合も延長戦で敗戦。チーム7連敗となりました。※参考記事

 

この時プロ2年目だった大瀬良大地はレフトを守っていた天谷を笑顔で抱きしめて、

「ドンマイ天谷さん。次打ってください!」

と声をかけたのです。ええ。私には聞こえるんですよ。

別に私だけでなく、当時のカープファンなら全員聞こえたと思います。

私は若き大瀬良にたいへん感動しました。今時こんな子いるのかと。

 

今で言えば常廣羽也斗が完封勝利目前の9回表に、中村奨成に落球されて1対1の同点。プロ初完封が消えたようなものです。

常廣だって

「奨成さん、ドンマイケル♡」

ぐらいのことは言えるかもしれませんが、10年前のあの時の無邪気な大瀬良の 満面の笑顔 というんですかね、一点の曇りもない心の底からの

チームを勝たせたい!

という純粋な思い。これは普通の人類には醸し出せない 壮大な優しさ だと思いましたよ。

 

今度別の機会に書きたいと思いますが、私は「愛される」より「愛する」方が断然ハッピーだと考えています。

大瀬良は愛する男です。だから愛される。

あれから10年後、解説天谷の前で大瀬良大地が前田健太の記録を抜いて46勝目。味わい深い1勝でした。

 

ちなみに日刊スポーツによれば、旧市民球場での最多勝利投手は北別府の107勝、2位が外木場69勝、3位川口67勝だそうです。※日刊スポーツ

 

石川雅規と前田健太

石川雅規。1回7安打6失点。

雨天中止からの翌日スライド登板。無茶したらアカンわー。昨日、言うたやん。

 

石川雅規は45歳。プロ通算187勝。

200勝がモチベーションなのはわかる。

前田健太が現在37歳。プロ通算165勝。

マエケンが

「カープで200勝を達成したい」

と言い続けている。んで、

先発投手にこだわる

とも常々口にしています。

 

私はマエケンに厳しい。

なぜなら私とマエケンは共に戦ってきたからです。今までもこれからも。

マエケンがメジャーをクビになれば、その骨を拾うのはカープしかありません。

だが先発ローテは 無条件に渡しません。

カープのローテで回りたきゃ実力で大瀬良に勝て。

マエケンが大瀬良に勝てないならマエケンはリリーフです。それがイヤなら ヤクルト へ行け。

ヤクルトは石川でも先発で投げさせてくれるぬるい温かい球団だからだ。

 

黒田博樹

黒田博樹がカープに電撃復帰したのも2015年でした。

天谷が落球した次の日、カープの連敗を止めたのは野村祐輔でした。翌日はマエケン、翌々日は黒田で勝ってカープは3連勝しました。黒田2勝目。

黒田博樹はこの時40歳、これがプロ通算184勝目でした。

 

黒田はカープに復帰する際、

「チームを勝たせたい。199勝で終わってもいい

と言って帰って来ました。※参考記事

大瀬良が「壮大な愛」なら黒田は

雄大な海

と言ったところか。俗に人が「漢気」と呼ぶやつです。

 

石川雅規と前田健太の「先発で白星を稼ぎたい」という美学はわかる。

だがお前たちのためにチームがあるんじゃねえ。

チームのためにお前たちがいるんだ。一般常識でしょうが。

黒田は「マエケン、ジョンソン、大瀬良大地」の強力ローテに実力で割り込んでチームを優勝に導きました。仲良し監督から与えられたポジションなんかじゃありませんでした。腕一本で勝負した。だから永久欠番なんだよ。

 

中村奨成

中村奨成。4打数3安打1四球。

いきなりスケールの小さい話に戻ります。笑

奨成はもうすぐ26歳。プロ8年目。通算45安打。

 

1番センターで猛打賞。ヒーローインタビュー。

ただ石川雅規から打った2打数2安打は計算に入れない。打って当然だから。

よって昨日の奨成は実質2打数1安打1四球。よくやった。

 

特に「8回裏の5打席目の四球」を高評価したい。

石川から6点取って以後、矢崎高梨に抑えられチームはムズムズしていました。大瀬良も調子悪いし。

8回裏、6対1、無死1塁、打者1番奨成、投手阪口。

「奨成はバントだろ」

と私は思いました。3番小園ですからね。

 

新井は奨成に打たせました。甘いぞ新井。スキを見せるんじゃない。

ボール2球でカウント2-0。3球目もボール球。

奨成はこれを振りました。ファール。

「アホやのう。ヒットが欲しくてたまらんて顔に書いてある」

 

カウント2-1。

ここからきわどいコースに2球来ましたが、奨成は2球とも見逃して四球。

「フツーの四球選んだだけやんけ。なに驚いとんねん!」

そりゃあ驚くぜ。玄人の奴なら誰だってね。

 

去年までの奨成ならボールを振らずにストライクを振っていました。いや去年も振ってたかな。調子いいのは一昨年だったかな。

とにかく今年の奨成はママのおっぱいを欲しがる子犬のように、キャンプからずっとボール球に飛び付いて打ってました。ヒットが欲しいって顔に出てました。

昨日、普通の四球を1個選んだことは成長の証です。安直なオープンスタンスにして、多少ボールも見やすくなったのかな。

 

小園海斗

小園海斗。3打数2安打2打点2四球。

小園はもうすぐ25歳、7年目。プロ通算563安打。

小園も良い四球2個を選びました。1回裏の石川が敬遠気味に投げたやつと6回裏に左投手のスライダーを見逃したやつ。

1回裏は1死3塁で敬遠気味でした。

6回裏は走者なしで相手が誘ってきたタマを見逃せました。

大味な試合展開の中で小園はコツコツと丁寧にチームのためにプレーしました。黒田や大瀬良がやってきたチームプレーを2025年の今、小園が受け継いでやっているのです。これを俗に 主力 と呼びます。

 

去年から小園は一日もサボらず毎日コツコツチームプレーを続けています。その一つが「ボールを振らない、ストライクを振る」ことです。

地味だけど「ボールを打たないでストライクを打つチーム」が一番強い。守る時はその逆。余計な四球を出さないチームが強い。シンプルだけど野球の神髄。

昨日の小園の2打点は1本の長打ではなくタイムリー2本です。こないだ「ハア…また得点圏かよ…」とか言ってたくせにしっかりタイムリー2本。

8回裏に補欠の奨成が繋いだ後の、ダメ押しタイムリーはデカかった。奨成も報われたし、岡本駿もラクになった。小園の前でゲッツー打った矢野雅哉も救われました。

 

10年前、落球した天谷を救ったのが大瀬良で、10年後チームを勝利に導いてるのは小園です。

昨日はいいものを見せてもらったよ。6点入った後はビール飲んであまり真剣に見てないけど。


おしまい
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ありがとうございました。

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