第170回直木賞に万城目学さんの「八月の御所グラウンド」と河崎秋子さんの「ともぐい」が選ばれました。
河崎秋子さんの「ともぐい」はまだ読んでいませんが「颶風の王」は読みました。「また共食いネタかよ」とちょっと笑ってしまいました。
今日私が解説するのは万城目学さんの「八月の御所グラウンド」のほうです。こちらは夏に買って読みました。この小説はハッキリ言って野球の話です。
以下はネタバレも少し含みますので、万城目ファンで未読の方はご注意願います、
京都御所の思い出
実は京都御所の中には草野球のグラウンドがあります。確か2面あります。
少年野球サイズのグラウンドもいくつかあります。
私も学生時代、御所グラウンドでプレーした経験があります。30年前の話ですが当時は「固くてデコボコしてる」という記憶があります。
マウンドも無かったような気がします。まあ草野球で「真っ平らなグラウンド」は日常です。
柵もありません。ファールボールは果てしなくグラウンドの外まで捕りに行かないといけません。
以上の情報は私の30年前の記憶です。間違ってるし変わってるところもあるでしょう。
1992年か93年にこのグラウンドで京都の大学生と試合をしました。私も大学生でした。
当時は何かの事件があって「金属バットなど凶器になりそうなものを自家用車に積んではいけない」という条例が大阪府にも京都府にも出されていました。
だから純真無垢な私たち大学生は
「じゃあ草野球選手は一体どうしたらいいんだ?」
とちょっぴり騒ぎになったことを覚えています。
そんな時代に金属バットを持った大学生が本当に京都御所に入れるのか? 通関みたいな関所があるんじゃないか?
ドキドキしながら京都御所に到着しましたが、何も変わらず警備員もいない入り口からすんなり入れました。京都御所はのんびりしてるなあ。笑
しかも京都御所の中では地元民の自転車がワンサカ走っていました。とても普通の公園でした。たぶん今も変わってないでしょう。
万城目学さん
本題。
八月の御所グラウンドはこの球場で開催されるなんとか杯の野球大会を中心に話が進みます。
なんとか杯の主催者は飲み屋のママさん。ママさんが主催する草野球大会で賞品も賞金も何もナシ。ママのファンのおっさん達がチームを作って野球するだけ。
京都大学の偉い教授もゼミの学生を集めて参加します。そのゼミ生の一人が主人公です。男の子。
対戦相手は建設屋チームや運送業チーム。相手は9人揃っているんですが、こちらはいつも7人か8人しか集まりません。
んで京都御所の中を自転車で走り回っている男性や、試合を見ている女子大生に声をかけて「助っ人」として参加してもらいます。助っ人制度も草野球では全くの常識でございます。
そんなゼミチームがなぜかあれよあれよと勝ち進み、助っ人のえーちゃんが実は○○○○だったというファンタジックなお話です。
私は万城目学さんの「元ファン」でございまして、過去にはこのブログでプリンセストヨトミの記事を書いたこともあります。
10年前の万城目さんはおもしろかったんですが、ここ10年間の万城目さんは少しおとなしかった。
正直この八月の御所グラウンドも2本立てなんですが2本とも
「なんだ、またこのパターンかよ」
と感じる作品でした。ごめんなさいね、今日も正直で。
今からネタバレします。ご注意ください。
野球ファンなら小説の中盤で「あれれ?これってもしかして京都商業のあの人やんw」とすぐに気が付きます。
プリンセストヨトミで魅せた「3人の検査官の誰が味方で誰が敵なの?全然わからない!」といった緊迫感や、鴨川ホルモーで感じた「ぐはぁ!まさかここで朱雀と玄武か!」みたいなビックリはありませんでした。
もう一本の高校駅伝の話も爽やかなんですが、御所グラウンドとネタがかぶるというか「近い話」なんですよ。
「八月の御所グラウンド」が直木賞を獲得したので今日から本も売れるでしょうが、私は今回の万城目さんの受賞はホルモー、あをによし、トヨトミの3本と合わせて「4本で一本!」みたいな受賞だと思います。単体ではホルモーやトヨトミの方が上だと思います。
だから八月の御所もいいんだけど、トヨトミもぜひ読んでくださいって話。トヨトミはマジでおもしろい。映画も本も両方良いです。
北別府学さん
オマケ。
以前も書いたんですが、万城目学さんはカープの北別府学さんにちょっぴり怒られたことがあります。
万城目さんが小学校の時に歌っていたという
「屁ぇ出る、屁ぇ出る、きたべっぷぅ~♪」
という曲を週刊文春か何かのコラムで紹介したからです。
マジメなペイさんはさっそく「不愉快です」みたいなコメントを残しましたが、1982年のペイさんが1回目の沢村栄治賞を受賞した頃はごめんなさい・・・
私もこの歌を毎日歌っていました。だって小学生だったんだもん。
万城目さんは私より少しお若いので、ひょっとすると1986年のペイさん2回目の沢村栄治賞の時に歌っていたのかもしれないですね。
「北別府の歌」は長く語り継がれる名曲なのです。
万城目学と北別府学。
名前も似てらっしゃいます。直木賞と沢村賞も似ています。
年末の特番で鹿児島県の秘密みたいなのを見たんですが、鹿児島県と宮崎県の県境には北別府さんだけでなく南別府さんとか上別府さんとか下別府さんもいらっしゃるそうです。