泥の付いた一万円札の「その後」~北の国から'89帰郷

2026年9月18日、脚本家の倉本聰さんが亡くなられました。91歳でした。

代表作の「北の国から」についてはこのブログで何度も取り上げてきました。

本日は若い人に特に人気のある「泥の付いた1万円札」の話をしましょう。カープの話はありません。

 

北の国から'87初恋

主人公の黒板純は北海道・富良野市に住む中学3年生。

彼は東京の高校へ進学するため、父と妹を富良野に残し1人で東京へ旅立ちます。

飛行機に乗るお金はありません。配送トラックの帰り便に同乗させてもらって、北海道から陸路で東京を目指します。

ちなみに富良野から函館まででも車で 8時間 かかります。

 

父親はトラックの運転手にお礼のお金2万円を茶封筒に入れて渡します。

旅立つ純。見送る父と妹。

車が走りだす。純は父に感謝して涙ぐむ。

初恋の女の子との思い出の曲をウォークマンで聴く純。

ここでトラックの運転手が純に茶封筒を差し出す。

 

「お前の親父が渡してくれた2万円だ。この金はお前が持っとけ」

「え、でもタダで東京まで乗っけてもらうわけには…」

「いいから持っとけ」

「でも…」

「その札をよく見てみろ。泥が付いてるだろ」

「はい」

「ピン札に泥がついてる。きっと親父の手についてた泥だろう。俺は受け取れん。お前が一生持っとけ。お前の宝にしろ」

 

ふう。

これだけ書いただけで目から汗が出るぜ。

純は多感な中学3年生。女の子にも都会にも憧れる年頃です。

父親は貧乏で酔っ払いで情けない田舎者。奥さんに浮気されて東京から富良野に移住してきた男。

 

そんな父親が不細工な格好で頭を下げて息子を東京に送り出す。

飛行機に乗るお金もないのです。息子をトラックで東京まで行かせる男です。

わずかなお礼のお金には泥までついてる。なんてカッコ悪い父さんなんだ。

ふう…

また目から汗が出るぜ。

 

と、ここまではよく知られた話です。

ネットの素人にも知られた話。

今日はこの泥の付いた一万円札が この後どうなったか についてお話しします。

 

北の国から'89帰郷

2年後、純は高校3年生になっていました。

高校と言っても定時制高校です。純は昼間働き、夜高校に通っています。

 

純は髪を染めバイクを乗り回します。

たばこも吸ってたかな? 忘れましたけど昔の高校生はよくたばこを吸っていました。

純の住まいはおばさんのおうちです。竹下景子。

竹下景子は純のお母さんの妹。純のお母さんは浮気して別れたと言いましたが、竹下景子も妻子ある男性と結婚しました。村井国男です。

 

複雑な家庭環境と低俗な友人たち。

純はバイクを乗り回し、尾崎豊を聴いている。

でもマジックテープの安い財布の中にはキレイに折りたたまれたあの2万円がいつも入っていました。

倉本聰は純をアホで不良っぽく描きますが、こういうワンシーンで純が「いいやつ」であることをいつもサラッと表現します。

 

ある日、その2万円がなくなります。

純は狂ったようにお札を探します。

お札がなくなった場所は職場の更衣室です。

職場は自動車の整備工場。社長は金に汚い町工場の男です。

 

純は社長を疑います。

社長室のロッカーを半狂乱になって探します。

そこへ社長が現れ、純を罵りぶん殴ります。

実は2万円を盗んだのは社長ではありませんでした。盗んだのは社長から借りた20万円を返済するのに苦しんでいた純の親友「あかまん」でした。

 

純の2万円を盗んだ犯人はあかまん。

しかし純の2万円を持っているのは社長です。だってあかまんは社長に返済するために金を盗んだのですから。

純は社長に懇願します。

「お願いです、返してください! 金額じゃないんです。あのお札じゃないとダメなんです!」

「うるせえ、誰が返すか。バーカw」

「お願いします。何なら3万円払います。あのお札じゃないとダメなんです」

 

キレた社長は純を殴ります。十発二十発殴ります。

うずくまった純の前にはスパナが落ちてます。ここは自動車の整備工場です。

純は衝動的にスパナを握り、社長の頭をぶん殴り、逮捕されます。

 

その後

竹下景子が身元引受人となって釈放された純。17歳の未成年です。

髪は長く茶髪の純。家に帰ると村井国男が非常に当たり前のことを言います。

 

「どんな理由があろうと暴力は許されん」

「髪を染めてバイクを乗り回すなんて不良と同じだ」

ハイ。

本日私が言いたいのはここまでです。

本日私が言いたいことは村井国男のこの言葉です。

 

「暴力は悪い」

「他人に迷惑かけるな」

「目立つ格好をするな」

どれもマニュアルに書いてあることです。子供でも知ってます。

 

私がいつも軽蔑している素人のスマホ野郎の根拠がこれです。

いついかなる場合にも通用する便利なマニュアル。

コンビニ野郎のおつむでギリギリ理解可能な10文字以内の安っぽい言葉。

それが

「他人に迷惑をかけるな」

「暴力は悪い」

そして

「反社と付き合うな」

です。

 

世界を敵に回しても

色々あって純の2万円は 1枚だけ 返ってきます。もう1枚は返ってきません。ここらへんもいつもの倉本聰です。

純は頭が悪くて茶髪で服装もアホっぽいですが、いいヤツなんですよ。

純は社長をスパナで殴って逮捕され、解雇されて無職となりましたがいいヤツなんですよ。

 

純のお父さんのところへも警察がやって来ました。純は未成年ですから親にも連絡が行きました。

正月になり、純は富良野に帰ってきます。

何も聞かず純を温かく迎える父と妹。純の髪は茶色いままです。

 

純は東京での傷害事件のことを父さんに話します。

父さんも刑事から聞かされてはいましたが、純が社長を殴った理由までは聞かされていませんでした。

純も理由を言いません。東京で人を殴って大ケガさせたことだけを報告します。

ここでお父さんは純に何と言ったと思いますか?

 

「暴力は悪だ」

「他人に迷惑かけるな」

でしょうか? お前は息子にそう言いますか?

 

父が息子に言ったセリフは

「男なら戦わなきゃならん時もある」

です。

 

素人のスマホ野郎はSNSの見出しだけを読んで選手を批判します。なんならそいつのインスタに誹謗中傷までします。

スマホ野郎には大義名分があります。

それが「他人に迷惑かけるな」「反社と付き合えば追放」などの薄っぺらい言葉です。

田中邦衛のセリフは「男なら」「戦え」です。つまりぶん殴ってぶっ〇ろせという意味です。昭和ですね。

 

今日のブログは「あなたはどう思いますか?」って話です。

どんな時でも純が悪いですか?

純はグレーですか?

殴ったことは犯罪です。しかし殴った人間が必ず悪いヤツとは限りません。

 

金を盗んだあかまんもいいヤツなんです。社長は返済を待ってくれませんが、純なら待ってくれると思っただけです。

私は30年前からずっと

「あかまんて変なあだ名だな。下ネタかな?」

と疑問に思ってましたが、今ネットで調べたらあかまんの名前は「赤塚まんじ」という設定だったそうだ。だから「あかまん」なのです。

倉本聰の作品にはいつもドラマで描かれない設定が山ほどあります。

今は何でもネットでググれて便利になりましたが、知らなくていいことは知らなくても別に困らないです。私は30年ずっと知りませんでした。

 

殴られた社長も別に悪いヤツじゃありません。貸した金に利子を付けて返せと言ってるだけです。

あかまんが金を借りた理由もお母さんが病気だったから。

世の中にはこういう話がごまんとあります。誰も悪くないのに不幸なことが起こるのは日常茶飯事であります。


おしまい
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ありがとうございました。

-妄想