フレーミング技術を真っ向から否定します。

私が尊敬しているダルビッシュ有が1年前にこんなコメントをしました。

「僕の中で初めて『良いフレーミングがこんなにピッチャーを助けるんだ』と実感したのはやっぱりオースティン・バーンズでした。ああすごいな、と」

元の記事はこちら。2020年1月

実におもしろいです。阪神の坂本誠志郎が一躍知名度を上げたのはこの記事のおかげ。笑

でも私は「この話・・・ホンマか?」と疑わざるを得ません。

長くなるので目次を付けます。


 

フレーミングの歴史

フレーミングとは捕手が自分の体とキャッチャーミットを動かして「きわどいコースをストライクに見せる技術」のこと。

悪く言えば審判を騙す技術。良く言えば投手を助ける技術。

ダルの記事には「MLBにはフレーミング専門のコーチが存在する」と書かれているし、ダル自身もフレーミングに大いに助けられたとコメントしています。

なのでメジャーリーグにフレーミング技術が実在することは間違いないのでしょう。

近年NPBでもだいぶ認知されてきた「フレーミング技術」

私の記憶によればその発祥地はひょっとすると日本かもしれません。

昔からNPBには捕球時にミットを動かす捕手がいました。中でも革命的なミットの動かし方を生み出したのはおそらく古田敦也です。元ヤクルト、名球会、選手兼監督。

1990年代に伊藤智仁のヨコに滑るスライダーや、高津臣吾のタテに落ちる速いシンカーをストライクに見せる技術はバツグンでした。古田は捕球時にキャッチャーミットだけでなく上半身も動かします。まず上半身を先に動かしてから、わずかに遅れてミットが動くイメージ。時間差は0.3秒差くらい。古田はコレを内角も外角もどっちでもできました。

当時はまだ「フレーミング」という言葉こそなかったものの、古田の登場以後、少しずつミットを動かす捕手が増えていきました。

おそらくこの時期、MLBでフレーミングはまだ一般的ではありませんでした。

てか邪道でした。←未確認

 

2008年北京五輪。日本の捕手陣によるフレーミングは国際的批判を浴びました。

私はこの時のことを詳しく覚えていませんが、日本はアメリカとの3位決定戦に敗れて4位。アメリカは3位で銅メダル。

この大会で「審判と相手チームを侮辱する行為だ」と言ってフレーミングを批判された国は日本だけでした。

北京での批判を受けて日本野球連盟は2009年から「捕手はミットを動かすな運動」をスタートさせました。実話です。ソースはニッカンスポーツ

●フレーミング年表

1991年、古田がヤクルトの正捕手の座を掴む

1993年、伊藤智仁旋風。この時点で古田のフレーミング技術は既に完成していた

2008年、北京五輪。まだMLBにフレーミングはなかった

2009年、日本野球連盟がフレーミング撲滅運動を開始

2015年、MLBで「トラックマン」が導入される

トラックマンの導入で野球のいろいろな数値が「見える化」されました。

フレーミングという考え方はおそらくトラックマン導入以後ではないかと思われます。←カッコ推定

 

ストライクゾーンの定義

ここでストライクゾーンのお話。ホームベースのサイズを再確認します。

幅は17インチと決まっています。約43.2cmで硬球およそ6個分。ちなみに奥行きも幅と同じ17インチです。

ストライクゾーンの定義は「ホームベースを少しでもかすればストライク」なので実質的には硬球8個分の幅があります。

ここでホームベースのあの形を仮に「五角形ABCDE」とします。

(図1)

草野球で球審をする時、私は「直線ABのライン」しか見ていません。ボールがここを通過するかどうかでジャッジをします。私のストライクゾーンは「平面」です。

ルール上では「直線ABを通過せず点Eをかすめるスライダー」もストライクということになりますが、このボールをストライクとジャッジする審判は多分プロでも少数派だと思います。多分プロでもストライクゾーンの幅は「平面」だと思います。

では「高さ」はどうか?

こちらは話が少々ややこしくなります。今度はストライクゾーンを横から見ます。

(図2)

図2は投手から見たストライクゾーンではありません。

横から見たストライクゾーンです。イメージでは「三塁ベンチから見たストライクゾーン」です。直線ACの18メートル左側にピッチャーがいて、直線BDの1メートル右側にキャッチャーと球審がいます。

「図2の直線AC」は「図1の直線AB」の上面で、「図2の直線BD」は「図1の点D」の上面です。

なんか「数学」みたいですね。ついてきくださいよ。笑

 

ストライクゾーンの幅をジャッジする時はたぶん「図1の直線AB」がほぼ全てです。シーズン数万球の全てのストライク投球のうちの99%が直線ABを通過するボールだと私は思います。

しかし40年プロ野球を見てきた経験上、ストライクゾーンの「高さ」についてはかなり個人差があると思っています。

草野球のストライクゾーンは感覚的なものですが、プロ野球のストライクゾーンにはかなり細かく共有化されたイメージがあるはずです。

「幅」をジャッジする時は「図1の直線ABが99%」と言いました。コレはつまり「平面的」ということ。わかりやすい。

ところがプロの球審が「高さ」をジャッジする時は「奥行き」まで加味していると思われます。「立体的」ということ。

これは私の個人的経験値による主観です。

 

ストライクゾーンの高低を説明するために、図2をもう一度貼ります。

(図2)

まず「ボールからストライクになるカーブ」の場合。

「図2の点Aの上を通過した後、点Bをかすめるカーブ」は完全にストライクですね。「高めのボールゾーンから入ってくるカーブ」です。

んでこの時、テレビで見ると捕手のミットもストライクゾーンの内側にあるように見えます。ミットは図2の直線BDの50cmほど右側にあるはずです。

 

続いて「低めギリギリいっぱいストライクのシンカー」の場合。

このシンカーが「点Cをかすめた後、点Dの下を通過する」と仮定します。シンカーは点Dをかすめません。

この場合、打者がこのボールを見逃せばそれは「見逃しストライク」です。点Cをかすめているからです。

そしてこのシンカーを普通にキャッチすれば、テレビ画面ではミットがストライクゾーンの外側、つまり低めのボールゾーンにあるように見えるわけです。

そこで1990年代の古田敦也はミットをちょっぴり動かした。高津の低めシンカーをストライクとジャッジしてもらうために。これがフレーミングの起源。←推測

 

2018年の試合中、巨人の投手・マイコラスが捕手・小林誠司に

「コバヤシ! こうやって捕るんだ! フレーミングをしろ!」

と怒ったことがあります。覚えてますか?

マイコラスのスライダーは「図2の点C」を通過しましたが、小林のミットは「図2の点Dの下」でボールを捕球しました。んで審判はボールとジャッジしました。この時、小林はミットだけでなく体もボールゾーンに流れていました。

 

古田は投手のストライクをストライクに見せることが上手だったため、徐々に「アウトコースに外れたボール球」や「点Cの下を通過したボール球」までストライクにジャッジしてもらっていました。キャッチャーでもないのに当時の野球部員はみんなマネしました。

現在のフレーミング支持派の方たちの意見は二つに分かれます。

「ボールをストライクのように見せてくれたらウレシイ」

「ボールはボールのままでOK。ストライクをボール判定されるのがNG」

どちらにしてもフレーミング支持派の方は、

「フレーミング技術によってストライク・ボールのジャッジを変えられる」

と信じておられます。

実際、審判団もフレーミング技術の存在を認めており、MLBお得意のトラッキングシステムでは「○○捕手はフレーミングによって年間10失点を防いでいる」などの試算結果も毎年公表されております。

 

しかし私は信じない。

2021年の今日、「フレーミング技術」は完全に市民権を得ております。コレは事実です。

しかし私はフレーミング技術の存在を信用してません。キッパリ

「フレーミング技術は存在しない」と考えています。

 

現在、多くの捕手が自チームを有利に導こうと必死こいてミットを動かしていますが、

私の感覚では球審は捕手のミットなど見ていないと思います。それ以前に「見えない」と言ってもよい。

古田敦也は一生懸命ミットをストライクゾーンに入れて捕球してましたけど、たぶん球審には効果が薄いと思われます。テレビ視聴者にはストライクに見えますけどね。

「捕手の体の使い方」はジャッジにちょっと影響があるかもしれない。背中が動くとホームベースの位置が変化して見えるかもしれないからです。

 

今でも「フレーミングなんて存在しない」と私は思う。

もしも存在するならそれは捕手の「ミットの動かし方」ではなく「背中の動き」だ。

だって球審がストライクボールのジャッジをする時、ミットの位置は無関係なんだもの。

捕手が背中を丸めて首をすぼめるように構え、さらに左腕を長く伸ばしてミットをなるべく前に構えるとします。これでやっと球審にミットの位置を見せることができるでしょう。実際、最近の捕手の構えはまたこういう形に戻ってきています。

一時期背筋を伸ばして構える捕手が流行しました。古田もけっこう背筋を真っ直ぐ立てるタイプでした。コレは投手に的を大きく見せたいとか、自分が捕りやすいとかの理由からです。

最近はまた昔よくいた「猫背型」に構える人が増えてきた印象です。猫背型のイメージは水沼四郎、有田修三、梨田昌孝など。イメージですよ。

古田なんかこんなんでしたよ。球審からミット見えると思います?

私は球審がキャッチャーミットを見てジャッジすることはないと思うし、そもそも見えていないことも多いと思う。

NPBでも2018年頃からデルタ社が捕手のフレーミング技術を数値化しているという。有名なところでは中日の木下や阪神梅野、巨人小林などに定評があります。

一方カープの捕手は誰もフレーミングをしません。中村奨成がなんかチョロチョロやることもありますが、たぶんアレは独学でしょう。カープ捕手陣はわりと「ビタ止め」が好きな印象です。

 

MLBでは実際に数値化されているので、NPBでも近いうちに数値化される日が来るでしょう。

田中将大と楽天なんかは「フレーミング専門コーチ」を雇うかもしんない。

ツイッターではフレーミングのオモシロ映像はすぐに拡散するようです。

しかしそれでも私は信じないなあ・・・

 

球審がストライクボール判定を「ミスジャッジ」することは多々あります。

でもミスジャッジのきっかけと「ミットの動き」はほぼ無関係だと思いますよ。

捕手の「背中の動き」は多少影響するかもしれないが、それでも「背中でストライクを勝ち取った回数」はミスジャッジ全体のほんの数パーセントではないか。

これは私の感覚的な推測です。根拠なし。

私は草野球で球審するのが好きでしたし、試合をコントロールをする楽しさも覚えました。

ストライクボールの判定もそりゃよくミスしましたけど、それはごっつい変化球やクソ速いタマだったから。見えなかったから。捕手のミットの動きで惑わされたことはありませんよ。みんなが古田のキャッチングをマネしてた時代ですけどね。

ミットを動かしたヤツには「セコいからやめとけ」と言ってたくらいです。

今はテレビで野球を見てるだけですが、フレーミングで球審が惑わされているとは思いたくないですね。


おしまい
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ありがとうございました。

-赤辞苑