2023.8.19(土)
広島 6-3 巨人 マツダ
私の住む地域では今、平成版の「白い巨塔」が再放送されています。
主人公は唐沢寿明と江口洋介。脇を固めるのが石坂浩二や森下暢仁・・・じゃなかった伊武雅刀。
私はこのドラマの大ファンで再放送のたびに見ています。今回気付いた時はもう財前教授の裁判が始まっていて、あと数回で最終回というタイミングでした。もっと早く教えてくれよ。たく。
人間の欲望
イチローは財前教授のファンらしい。実にイチローらしい。
私は里見教授のファンです。私利私欲を捨て公のために全力を尽くすところが私とそっくりだから。
医学界での立身出世を目論む財前と、お金や権力に媚びることのない里見を対照的に描いたこのドラマの原作者は山崎豊子さんであります。
山崎豊子さんはなんで国民栄誉賞をもらえないのかな?
権力を批判し続ける人だからかな。笑
司馬遼太郎、山崎豊子の両人は国民栄誉賞を授かって当然の人物だと思います。
白い巨塔というドラマは同期入団で親友の財前と里見を対照的に描くことで成立するヒューマンドラマです。
私利私欲、個人成績最優先の財前は村上宗隆タイプ。
滅私奉公、チーム打撃と自己犠牲の里見は野間峻祥タイプ。
どちらにも正義があり、どちらも正しい。人の中には必ずどちらの人格も存在します。
末包昇大は昨日のヒーローインタビューで喜びを爆発させました。
中村奨成が上がってくるタイミングで必ず活躍する末包昇大。
「なんでやねん!」と思いつつも「そりゃそうだよな」と感じる私もいる。
末包昇大と中村奨成は一つの椅子を争っているからである。
ライバルと親友
10年ほど前のNHKスペシャルの中でイチローが言いました。
「今時、白い巨塔のDVDを見てるヤツなんて俺くらいじゃないかなw」
アホかイチロー。
私も見てます。みんな見てます。
さっきも言いましたがイチローは財前教授のファンらしい。
だけどきっとイチローは里見のことも好きだと思う。里見ファンでなければ高校野球の応援などできないからです。
財前と里見はことあるごとに反目します。
医療の現場で自身の出世と患者の利益は相反するものだからです。
財前は裁判所で偽証してまで立身出世を図ります。
里見は裁判所で真実を証言したため、職場を追われ家族も失います。
だが二人とも後悔はしません。それが自分の生き様だからです。
そしてなんとこの二人。
この二人はなんと・・・
無二の親友なのであります。大親友。
巨人と広島のように対照的な二人が大学時代からの同期で親友。お互いがお互いの実力を誰より信頼しているのです。
菊池涼介と丸佳浩。末包昇大と中村奨成。
立場は正反対のライバル同士。
だけど親友で信頼関係なのです。
中村奨成が昇格した日に末包昇大がホームラン打つのは偶然ではないのです。
いいとこで終わる。笑
んで平成版の白い巨塔なんですが、これが毎回絶妙なところで終わるんですよ。笑
「うおーい、そこで終わるんかい!」
私は毎回叫んでいます。笑
金曜日の最後には苦戦する関口弁護士があることに気付きます。
「ひょっとして、私たちは戦い方を間違えていたのかもしれない」
そこから絶対優位の財前&大学病院組に反撃を開始します。
追い詰められる財前。
里見の元には家族と仲間が帰ってきます。
他人を蹴落として成り上がる者には必ず天罰が下るのか?
やっぱり最後に勝つのは正直者なのか?
山崎豊子先生の世界観はそう単純なものではありません。月曜日ぜひ続きをご覧ください。
こないだ「日航機墜落事故から38年」とニュースになりましたね。
坂本九さんや阪神タイガースの球団社長などがお亡くなりになった悲劇から38年。
後に山崎豊子さんは「沈まぬ太陽」という作品の中で日航機墜落事故を題材に挙げ、ここでも二人の男を対照的に描いています。
日航機墜落事故は1985年8月。
その時セリーグの首位に立っていたのは前年の覇者・広島カープでした。
阪神タイガースは選手会長の岡田彰布を中心に首位カープを追いかけ、8月に逆転。そのままリーグ優勝&日本一に輝きます。
バース三冠王。バックスクリーン三連発。
いろいろあった1985年ですが盗塁王は高橋慶彦でした。シーズン73盗塁。
金と愛
話が逸れましたが、山崎豊子作品の中では権力と道徳の間で揺れる人間心理が描かれています。
権力と道徳とは簡単に言えば「お金と愛」であります。
国立の大学病院と日本航空に立ち向かう1匹の小さい蟻。
野球界に例えるなら巨人に立ち向かう市民球団。
財前はあくなき欲望の亡者のようでありながら、実は田舎の母親と親友里見に対する愛情を捨てきれぬ人間らしい一面もチラ見せます。
これがイチローの心をくすぐるんだと思います。
巨人にもそういうとこが少しでもあれば私も好きになれるんですが、巨人はあくまでも伝統的に欲望の亡者であります。
大学病院を追われた里見は町の小さな病院で働き始めますが、恩師の大河内教授や他でもない財前が里見を訪ねてこう言います。
「君さえ良ければこの病院で働いてみないか」
「君さえ良ければ僕のがんセンターで内科部長を務めてくれないか」
正直にまっとうに生きている者には誰かが声をかけてくれる。
権力や地位にしがみつくことなく、自分の信念を貫き通す。捨てる神もあれば拾う神もある。
なんかそんなことを思いました。
ビデオに録画した白い巨塔を見ていて財前側の若い医師達がこう言いました。
「お前、今頃真実をしゃべったらクビだぞ。それどころか偽証罪で逮捕されるぞ」
巨人は真実を語るのもたいへんなようです。たいへんだねえ。