[あと一本が出ない]野球用語の基礎知識

それはまだカープが弱かった2014年頃。

菊池涼介と丸佳浩でチャンスを作るんですが、エルドレッドと松山竜平に「あと一本が出ない」でよく負けていました。


野球は点を取り合うスポーツ

「あと一本が出ない」は野球の永遠の課題。

そりゃそうですよ。野球は点を取り合うスポーツ。攻撃側は「あと一本」を打ちたい。守備側は「あと一本」を打たせたくない。ここが野球というスポーツの勝負の分かれ目。

サッカーでも「決定力不足」なんて言葉がありますが全く同じ意味。永遠の課題。「ゴール前まで攻められてもゴールラインだけは割らせないよ」ってのがサッカーというスポーツ。野球も同じです。ランナーは出すけど得点は許さない。

野球は「あと一本」を奪い合うスポーツ。「あと一本」を奪えば試合に勝つ。

しかし「あと一本」を奪うことこそ一番難しいのです。相手も必死ですから。

あと一本って何なの?

ほとんどの場合「あと一本=決勝点」であり、時に「重要な追加点」であったり「同点打」であったりする場合もあります。

要するに「勝敗を決定づける得点」があと一本です。

そして試合後の敗因として監督たちがよく口にする「あと一本が出ていればね・・・」の場合の「あと一本」とはほとんどの場合が「タイムリーヒット」を指します。時々「せめてあそこで犠牲フライでも打っていればね」と言う監督もいますがそれはレアケース。やはり野球の基本は「タイムリーヒットを打つか打たないか」が勝敗の分岐点です。

ちなみに勝利監督の「あの一本が大きかった」の一本は序盤の得点でも終盤の得点でもOK。

投手陣が好投して序盤の先制点を守り切る勝利もあります。このようにあと一本とは必ずしも試合終盤の逆転打や決勝打である必要はありません。

守備側はあと一本を打たせたくない

当たり前の話ですが、守備側は相手チームに「あと一本」を絶対に打たれたくありません。それはつまり「試合に負けたくない」と同義であります。

ここで投手も守備陣も本気を出します。

それまでの「シングルヒットなら打っていいよ」っていう緩いピッチングが、勝負所では「絶対に打たせん!」「ここは三振を狙ってやる!」っていう本気モードに切り替わります。

マラソンに例えると勝負所でラストスパートをするようなもの。近年では「ピッチャーがギアを上げる」なんて言い方もしますね。

守備陣も勝負に出ます。ランナー2塁なら外野は前進バックホーム体制。ランナー3塁なら内野が前進バックホーム体制。

そしてバッテリーは守備シフトも頭に入れてピッチングをします。一塁方向に打たせるのか、三塁方向に打たせるのか。ワンバンで三振に取るのか、ゴロでゲッツーを取るのか。

これぞ野球の醍醐味。サッカーで言うとゴール前の攻防です。

ここで打つ人がスーパースター。ホームラン50発の王選手よりホームラン25発の長嶋選手の方が人気があったのはこの勝負強さが理由ではないでしょうか。

チームの強さ=あと一本を取るチカラ

多くの場合、あと一本を期待されるのはクリーンアップ。特に四番打者ですね。

※関連記事:四番打者(2017.10.25)四番打者論(2018.8.9)

2019年現在、巨人の四番は岡本和真、ヤクルトの四番はバレンティン。彼らは穴の大きい打者でホームラン数の割に「あと一本を打つ能力」が低い。だから私の評価が低い。

一方で5番打者や6番打者で「チャンスでしか打たない」人もいます。1988年の仁村徹や1989年の岡崎郁は「あと一本」をよく打ちました。「チャンスでしか打たない」は大袈裟ですが、異常にチャンスに強い人がいます。この二人、シーズン打率は.265なのに得点圏打率は.389だったりします。

2014年の広島カープは四番がエルドレッドだったりロサリオだったり覚醒前の松山竜平だったり。

彼らはランナーがいない時に長打を打たせてもらえても、2死満塁などの場面ではなかなか打たせてもらえませんでした。野村謙二郎監督の最後の年は「あと一本」を何度ボヤいたことか。笑

2010年頃、オリックス時代の岡田彰布監督はFダルビッシュ有と対戦する時「ランナー1塁で長打狙い」を仕掛けていたそうです。「走者を2塁に進めたらダルビッシュが本気で投げてくるやろ。あんなの打てへんやろ」がその理由でした。ランナー1塁でエンドラン。ツーベースやホームランを狙ったそうです。

投手は「あと一本」の場面で全力投球。

それを打ち返すのが四番の仕事。30発40発ホームランを打つ能力とは完全に別の能力が必要なのです。

あと一本の奪い方

最後は打撃の話で締めます。

あと一本の奪い方。

まず第一は三振をしないこと。当然ですね。相手の決め球を見逃せるかどうか。

第二に甘い球を一発で仕留めること。本気を出したピッチャーは1打席で2度も3度も甘いところに投げてくれません。エース級なら1球あるかどうか。

ストライクを取られるごとに確率は低くなります。例えば「G菅野智之vsC高橋大樹」みたいな対決だと、大樹は第1ストライクをファールしてしまったらもうヒットの確率は10%です。2ストライクを取られるとヒットを打つ確率はほぼゼロです。なぜなら菅野はフルカウントから平気でボールになるスライダーを投げてくるからです。2ストライク後の高橋大樹は最高の結果で四球です。好調時の菅野なら2ストライク後は間違いなくヒットを打たせてもらえません。エース投手は絶対に甘く来ないです。

あと一本の奪い方、その三は内野ゴロ&犠牲フライ

カープは特に内野ゴロで得点するのが上手いです。

決勝点の犠牲フライを「最高の最低限」とかワケのわかんない呼び方をする人がいますが、犠牲フライを打つことはヒットを打つこととほぼ同じ難易度。ホームランの打ち損じで犠牲フライになるのはOKですが、最初から犠牲フライ狙いの打撃をすることはちょっともったいない感じです。送りバントも同じこと。相手に1アウトをあげて1つ塁を進めるプレーはもったいないと私は思います。

サヨナラの場面なら送りバントも犠牲フライ狙いもOKですよ。

その四。後ろに繋ぐ

勝負所で必ずしも自分で決めなくて良い。例えばG菅野なら簡単にヒットにできる球など投げてくれません。

そこでボール球に釣られず、ストライクだけをカットして次の打者に繋げるのです。次の打者が石原慶幸でも、そこに代打長野久義が出てくるかもしれません。打てる球が来なければ、来るまで待とうホトトギス。来なければ歩いて出ようホトトギス、です。

その五。勝負に出る。打ちに行く。

もし菅野がツーストライク後に甘い球を投げてきたら勝負に出ましょう。

「その二」の打つ話は2ストライク前の話で、「その五」の打つ話はツーストライク後の話。

コレをカットするのが「その四」の後ろに繋ぐ作戦。

コレをイチかバチか前に打つのが「その五」の作戦。

カープのレギュラーなら石原以外全員「その五」でいいと思いますね。

次が誠也だとか次がバティスタだとか考えなくていいと思います。

2019年のカープ打線は石原以外の全員が「オレが決めてやる」でいいと思いますね。お前が決めろ。

オマケ:

ツーストライク後にど真ん中を見逃し三振する選手がいますが、あれも私は気持ちがよーくわかります。

内角ギリギリ外角ギリギリを攻められ続け、突如ど真ん中にストレートがどーんと投げ込まれると一瞬息を呑んで手が出ないものなんです。私も何度も経験しました。笑

8月13日の巨人戦。1対1の9回表2死3塁でG若林が中村恭平のど真ん中153kmを見逃し三振しました。あれがまさにこれ。気持ちはわかる、若林。


おしまい
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ありがとうございました。

-赤辞苑