カープのドラ2は伊達じゃない!

12/25に放送されたNHK・プロフェッショナル仕事の流儀。
この日、紹介されたのは広島東洋カープのスカウト部長、苑田聡彦さん。

 

いやー良かった。
感動しました。

 

黒田博樹との絆。
ケガで引退した選手との絆。
そして愚直にグラウンドに通う泥臭さ。

 

やはり逆指名時代には苦労があったとか、カープが指名する選手には「熱い闘志」が必要だとか、カープの誠意はお金じゃないとか。

 

「やっぱりな」と思わせる内容でした。
ますますカープが大好きになりました。

 

ちょっとビックリしたのが松田オーナーがスカウト会議にしょっちゅう顔を出していること。笑
そしてドラフト指名(1位のみ?)の決定権がオーナーにあるということ。
これは吹き出してしまいました。
噂には聞いていたものの、本当に球団オーナーがドラフト指名の決定権を持っているんやなと。
これもまたカープらしい、野球好きのオーナーを示したシーンでした。

 

スカウトの苑田さんにはNHKのカメラが180日間も密着していたそうです。まるまる1シーズンやん!
NHKの密着取材は定評がありまして、ご存知の方も多いと思いますが、彼らの番組制作費は民放の10倍くらいあるそうです。←噂
だからこういう赤裸々なドキュメンタリーが撮れるのでしょう。
自然環境モノや野生動物モノでは
「コレ、どうやって撮ってんの!?」
なんて仰天映像が必ず出てきますもんね。

 

昨日の仰天映像はリアルなカープのスカウト会議。そこにカメラが潜入しました。
ハラハラドキドキです。もしカメラマンが機密事項を漏らしたらどうするんやと。

 

番組では何度も何度もスカウト会議の映像が流れました。
選手をふるいにかけリストから選手を外すシーンや、リストアップしている選手にAランクとかBランクとかの評価を下すシーン。
夏の甲子園が始まる前のスカウト会議では、まだ爆発していない中村奨成を既に1位候補に挙げていたことや、坂倉将吾の存在がそれを決断させなかったことなどが取り上げられました。
ドラフト直前の会議では松田オーナー含む9人のスカウトが1位指名選手を決定。
そして現場からは「高校生内野手」を希望する声があがりました。
それが二松学舎の永井君。
緒方監督自らが永井君の外野守備の映像を見て「内野も守れる」と判断。指名に至る経緯も取り上げられました。
これも凄い映像でした。緒方監督のオーラが凄かった。
「おおー、本物の緒方監督や」
現役生活を共に送ったはずのスカウトたちが全員直立してましたもん。
監督登場シーンではなぜか私まで背筋が伸びました。笑
しかし今回の主役は御年72歳の苑田さんです。
本当は統括部長として若きスカウト陣を指揮していればいい立場なんですが、現場に足を運ぶことをやめようとしません。
年間350試合を現場で生で見るそうです、

 

そんな苑田さんのスゴ技。
苑田さんはピッチャーを見る時、ピッチャーだけでなく内野手の守備位置も見るんですって。
ピッチャーが投球モーションに入ると同時に、二遊間の選手が守備位置をチョコチョコっと2、3歩変えると、そのピッチャーは「コントロールが良い」のだそうです。
内角外角をしっかり投げ分けられるから、内野手は打球の方向を予測できる。
投球がどこに行くかわからない時、内野手は守備位置を変更できないというのが理由。
これは唸りました。確かにそうですね。
伊達に40年スカウト活動をしておられません。

 

そして一番うれしかったのが「選手のどこを見るか」という点。
苑田さんは迷わず「向かっていく気持ち」「闘志」「負けず嫌い」などを挙げられました。
練習ではいいボールを投げるも、試合ではフォアボールを連発する投手を見て、苑田さんは一言。

 

田村恵スカウト
どうですか?

 

苑田
うん。このピッチャーが一番いいな。

 

な・・・なんで!?←驚愕
全然わかりません。
私ならこういうタイプのピッチャーが一番嫌いで苦手です。

 

しかし苑田さんいわく、
「山口(翔)君はフォアボールを出しても全く下を向かない。
 こういう選手こそプロで伸びる選手。
 バッターでも当てに行って三振とかは見たくない。
 フルスイングしての三振だったら私はまた見たいと思う」
だそうです。
嬉しいなあ。
プロ野球なら「ブルペンエース」は問題児かもしれませんが、相手はアマチュア投手。
現在の完成度よりも将来性、伸びしろ、そして性格を重要視するカープらしさにあふれたシーンでした。
苑田さんは「山口君が今年の高校生でナンバーワンピッチャーだ」とおっしゃいましたよ。
楽しみだなあ。ワクワクします。
そんな山口君をカープは2位で指名します。
以前、このブログでも「カープの2位はけっこう粒揃い」みたいなことを書いたんですが、もう一度整理しますね。

 

ここ10年の2位指名選手 ()は1位選手
2008 中田廉 (岩本貴裕)
2009 堂林翔太(今村猛)
2010 中村恭平(福井優也)
2011 菊池涼介(野村祐輔)
2012 鈴木誠也(高橋大樹)
2013 九里亜蓮(大瀬良大地)
2014 薮田和樹(野間峻祥)
2015 横山弘樹(岡田明丈)
2016 高橋昂也(加藤拓也)
2017 山口翔 (中村奨成)

 

ちょうど10年前の2008年の秋、悪夢の「逆指名制度」が廃止され、ドラフトが正常化されました。
そして翌2009年の春にマツダスタジアム開場。20歳の前田健太が躍動。
カープの復活ストーリーは2008年から始まったのです。

 

上の2008年以降の2位の選手たちを見てください。
1位に負けないレベルの選手たちです。

 

そんな2位指名をタイプ別に分類すると

 

【1】よくぞ残ってた!よく2位で指名できたな的2位
  堂林翔太、鈴木誠也、高橋昂也
【2】どうしても欲しい!スカウトが惚れ抜いて絶対よそに獲られたくない的2位
  菊池涼介、薮田和樹、山口翔

 

【3】オーソドックスに補強ポイントをついた至極真っ当な2位指名
  中田廉、中村恭平、九里亜蓮、横山弘樹

 

こんなかんじ。

誠也と山口君は【1】でもあり【2】でもあると思います。</d iv>

【3】のタイプはいわゆる「即戦力」を補強する色合いが濃いですかね。

 

他球団も含め、近年のドラフト1位は「即戦力度」が優先されているように感じます。
1位で即戦力、2位で素材という順序が多いというイメージ。
典型的なのが2016年。
選手の「格」では昂也君のほうが上だったと思うのですが、指名の「あや」と言いますか、他球団との兼ね合いもあって1位で加藤君、2位で昂也君という順序になりました。2012年の高橋大樹と鈴木誠也の指名順もドラフトのあやだったと聞いております。

 

そういう意味で歴代のカープ2位指名選手は「スカウトの好み」が色濃く反映されるのかなと思います。
2014年クジを外して野間を1位指名。2位に無名の薮田君。
当時は「大失敗」と見られたドラフトですが、私は「ロマンの塊」と見ていましたよ。
この二人が2017年の優勝の立役者。野間はもう一皮むけないといけませんが、薮田君は完全に覚醒しました。
薮田はカープのロマン枠・ドラフト2位の大看板選手です。
あ、誠也も2位か。
最後に。
NHKの番組ではカープの9人スカウトと苑田統括部長が本当にアマチュアの選手に惚れ抜いている様子が伝わってきました。
1987年のドラフト1位川島堅が接骨院で映った瞬間、30年ぶりでしたが、テロップが出る前に私はすぐにわかりましたよ。
私も川島には惚れ抜いていましたからね。

 

川島いわく
「苑田さんは選手が引退した後も気にかけてくれる優しい人」

こんな人にお世話になりたいものです。

黒田博樹をスカウトしたのも苑田さん。
黒田いわく
「一番最初、芽が出る前から専修大学に通ってくれた苑田さんのチームに入りたい。契約金は関係ない」

 

嬉しいじゃないですか。
カープの誠意、スカウトの誠意。
こういうのが伝わって入団してくれた選手たちのチームだからカープが好きだし、誇りに思います。

 

そう言えば黒田博樹もドラフト2位でした。
おそるべしカープのドラフト2位!

おしまい
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ありがとうございました。

-雑感