草野球でよくあるプレーですが、
無死1塁で打者が空振り三振。だが投球がワイルドピッチに。
1塁走者は2塁へ進み、打者は振り逃げで1塁セーフ。無死12塁となりました。
草野球ではこのまま無死12塁で試合が進行することが珍しくありません。だけど正確には「1死2塁でプレー再開」が正解です。なぜかわかります?
本日は開幕してから、ずっと書きたかった「球審がハーフスイングを取る件」について語ります。
審判員の目標
唐突ですが、審判の皆さんにも「目標」があることをご存じですか?
あの人たちも人間でございまして、試合に出場する以上「目標」を持って臨んでいます。
その目標とは「試合を安全かつ速やかに進行させる」というものです。AI審判にできるかね?
私は草野球の球審を務めた経験もたいへん豊富です。振り逃げやインフィールドフライなどのややこしいプレーも数々裁いてきました。
冒頭のクイズの答えは「塁が詰まった状態の時、振り逃げはない」からです。打者は三振でアウト。1塁走者は暴投で2塁へ進めます。冒頭だけに暴投。
私のストライクorボールの判定はハッキリ言って日替わりです。両チームの力が互角であれば厳密にジャッジしますが、明らかに「大人と子供」ほどの差があれば、手心を加えます。私はこれを「ゲームコントロール」と呼んでいます。
野球界に「ゲームコントロール」という概念はあまりありません。あるとすれば「カウント3-0ではストライクゾーンが広くなる」「カウント0-2では狭くなる」程度です。
プロ野球でも草野球でもストライクはストライク、ボールはボールというのが普通のマジメな球審です。
不真面目な私がなぜ手心を加えるかというと、2時間以内に試合を7回まで進めたいからです。草野球は7イニング制。2時間はグラウンドを借りられる時間制限。
10対0で負けてるチームの2番手投手、3番手投手なんてハッキリ言ってスカタンです。ストライクがまともに入りません。
そんな状況でも、ほとんどの球審は厳格にストライクorボールをジャッジし続けます。
2死満塁でカウント3-2。きわどいコースをボール判定。押し出しで得点は11対0。
野球人はマジメというか、頭が固い。
こんな時、私なら少々のボール球でもストライクコールをします。
「ゲームコントロール」という言葉はサッカー用語でございまして、主に「ここまでならファール(反則)を取る、ここまでなら取らない」という「線」を引くことがゲームコントロールの重要ポイントになります。
サッカーではファールを取られる度にプレーが止まります。ファールを受けた側がフリーキックで試合を再開するのですが、ゲームコントロールの上手な審判はあまりファールを取りません。サッカーはプレーが止まらないまま攻守が入れ替わる方がスリリングで面白いからです。
サッカーの審判があまりファールを取らないとどうなるか?
試合が荒れてタックルやラフプレーが増えます。だって審判は笛を吹かないんだもの。
では上手な審判がファールを取らずに、どうやって試合をスムーズに進行させるのか?
それは・・・
審判が選手を・・・
睨む のです。
ウソのような話ですが本当の話です。ぜひサッカーに詳しい方に聞いてみて下さい。
上手な審判はファールスレスレのタックルを流して、
「お前、次もやったらカードを出すぞ」
といったオーラで選手を睨みつけます。しかしファールは取りません。
あるいは反対に試合開始早々、軽いタックルに対してファールを取り、
「この試合、ファールを徹底的に取るぞ」
なんて威嚇するパターンもあります。
要するに上手な審判は選手を威圧して、ファールを「させない」のです。これがゲームコントロール。
「親父と息子の関係」に似ているかもしれません。グレてる息子をガミガミ叱るのではなく、背中で厳しさを見せつける感じ。
日本サッカー協会の審判マニュアルにはハッキリと「審判の目標」の項目があり、そこには「試合を安全かつスムーズに進めること」と明記されています。
野球のルールブックに審判の目標という概念はなく、おそらく毎シーズンごとのアグリーメントで「今年はこういう感じで試合を進めていこう」みたいにやっているのでしょう。
球審のハーフスイング判定
ちょっと前置きが長くなりました。
ここからが本題です。NPBにおけるハーフスイングの話。
今年の開幕から、球審が打者のハーフスイングで空振りストライクを取る回数が格段に増えました。
2024年の球審がハーフスイングを取る回数は、2023年のたぶん 10倍 に増えてます。
明らかに振ったというスイングは球審がスイング、いわゆる空振りを宣告できます。
しかし球審はストライクorボールもジャッジしないといけないため、微妙なハーフスイングについては塁審に確認をすることができます。
今年はこの「塁審への確認」がないまま、球審に空振り三振と判定されるハーフスイングが多い。んで、なぜか打者も何も言わない。
ルールブックには「球審がストライクを宣告しなかった時だけ、塁審にジャッジを求められる」とあります。
誰がジャッジを求めるかというと守備側のキャッチャーです。
コースがストライクならハーフスイングが回っていようがいまいが、球審は「ストライーク!」
コースがボール、微妙なハーフスイング、球審の判定もボール。
この3つの条件が揃った時、キャッチャーが「振った!」と言って、塁審へのジャッジを求めます。左打者なら三塁塁審。右打者なら一塁塁審。こないだの試合で石原貴規は右打者の時に三塁の塁審にジャッジを求めてました。
NPBのルールは変わっていないんですよ。
私が変わったと感じているのは「スイングの定義」です。
普通の人はハーフスイングの振ったか振らないかを、「バットのヘッドが選手の手首を超えたか超えてないか」で判定していると思います。私も同じです。
だけど球審からヘッドはなかなか見えにくい。だから去年までは塁審に確認していました。
だけど今年は私が見ているカープ戦だけで、球審に「ヘッドの返っていない空振り三振」を 3つ くらい取られました。
球審がハーフスイングを取った時、毎回必ず「横からの映像」が出るわけではないので、他にもっとあると思います。
「え?今のは振ってないだろ。せめて塁審に聞いてくれよ」
1ストライク目や2ストライク目のハーフスイング判定なんて、テレビ局もほとんど横からの映像を映してくれません。
何が今年変わったかというと「球審は打者のグリップを見ているんじゃないか?」という点。個人の妄想です。
ヘッドが返った返ってないは球審にはわからない。
だけど「グリップが肩の前に出た」は後ろからでも見えるかもしれません。
私が球審をする時はヘッドだけを見てました。グリップを意識したことはありません。昔はそんなルールありませんでしたから。
2024年の球審はなぜか、微妙なハーフスイングをもの凄く自信満々でスイング判定をしています。去年の10倍です。
もちろん振ってるハーフスイングは球審のスイング判定でOKですが、どちらとも取れるハーフスイングを球審に自信満々にスイング判定されると「えっ?せめて塁審に聞いてくれよ」となるのです。
判定の基準がたぶんどこか変わったんだと思います。
ちなみに打者が塁審に「今の振ってないよ!」と要求することはできません。
打者ができることは球審に向かって「今の振ってないよ! せめて塁審に聞いてくれよ!」と抗議することだけです。
カープにも対戦相手のチームにも、最近はこの抗議をしない人が増えました。マジメというか大人しいというか・・・
山崎武司とかタフィー=ローズならゴリゴリ詰め寄ってますよ。
今週のゲームプラン
交流戦の最終週。ここまでカープは6勝6敗。
前半が7連敗中の西武と3連戦。
後半が好調の楽天と3連戦。
どちらも敵地です。なので毎日DHを使えます。
9番DH佐藤啓介でいいと思います。彼、一発もありますよ。
なお本日は5月度の月間MVPの受賞者が発表されます。
小園海斗が初受賞する可能性がけっこう高いのでご注目下さい。