坂倉将吾の成長曲線と伝説捕手5人の23歳シーズン成績比較

2021.12.4(土) 都市対抗1回戦

東邦ガス 2x-1 日立製作所 東京D

今シーズンもNHKの球辞苑が始まりました。昨日のテーマは「見逃し三振」

内容が深くてとても面白かったです。12/6(月)にも再放送がございます。NHKBS1

昨日の都市対抗ではカープの「松竜」が延長10回1死満塁で登板。2者連続三振で切り抜け、見事にサヨナラ勝ちを呼び込みました。



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成長する松竜

松本竜也が延長タイブレークに登板。

3番打者を空振り三振。4番打者を見逃し三振。投じた10球は全部ストレートでした。

前回私が分析した通り、彼、今、

自信満々で投げられています。素晴らしい。

格上の日立を上から見下して投げています。前回のシビれる場面を切り抜けたことが、この若武者に大いなる自信と経験を植え付けてくれたようです。

次節は準決勝、vsホンダ熊本。松竜の関係会社です。

日時は12/6(月)18:00プレーボール。球辞苑の再放送とかぶってます。笑

見逃し三振は捕手のワザ

夜の球辞苑のゲストは阿波野秀幸と鳥谷敬。

私、この二人の名前だけで

「今日のテーマは見逃し三振かな?」

と当てられたと思います。

二人ともとても面白い話で、現役時代のイメージそのままでした。

番組冒頭で阿波野が「ピッチャーも嬉しいけど、見逃し三振を一番喜んでるのは捕手だろう」と発言しました。全く同感です。

2021年、「見逃し三振奪取率1位」は秋山拓巳(阪神)。

秋山の見逃し三振率は42%でした。式は「見逃し三振数÷奪三振数」です。

2位岸(楽天)が38%。3位マルティネス(ソフトバンク)37%、4位九里亜蓮(広島)35%、5位は忘れました。

秋山は梅野とコンビを組み、12球団で最も「三球三振」の数が多い投手でした。

岸の見逃し三振はまっすぐが多い、マルティネスのは平均153kmというデータもありました。

九里のは半分が内角ストレートですが、見逃し三振を奪った球種が最も多彩だったという話でした。見逃し三振を奪った球種が7種類ありました。

阿波野秀幸の言葉を借りるなら、見逃し三振は捕手の仕事だそうです。

1位が梅野、2位が炭谷、3位甲斐、4位坂倉と考えれば、ベテランとクセの強い捕手が上位に並んでいることが一目瞭然。

番組の中では甲斐拓也がVTR出演し、オリックス杉本との勝負を振り返っていました。この時の甲斐の態度がすごく自信満々でした。29歳で日本代表の正捕手。GG賞5年連続5回目。さすがの貫禄でございました。

偉大な捕手達の23歳シーズン

そんな甲斐拓也もプロ5年目の成績は1軍でわずか1試合の出場に留まっております。ちなみに6年目も13試合。この時代の正捕手は鶴岡や細川。

鈴木誠也の5年目は四番に座り、2位に10ゲーム差をつけてリーグ2連覇するのですが、それは誠也が外野手で「タナキクマルの後ろ」だったからでもあります。エルドレッドや松山もいたしね。

高卒5年目、23歳の捕手が投手陣とチームを引っ張るというのは相当重労働であります。

試しに偉大な捕手達の23歳シーズンの成績を貼り付けておきます。

■伝説捕手の23歳成績

1988 古田敦也(トヨタ) ソウル五輪で銀メダル獲得

1999 城島健司(福岡) 135試合、全試合スタメンマスク

2001 阿部慎之助(巨人)117試合スタメンマスク。打率.225、13本塁打

2011 會澤翼(広島)  19試合出場。スタメンマスクは4試合

2016 甲斐拓也(福岡) 13試合出場。6打数1安打

2021 坂倉将吾(広島) 132試合出場。セリーグ2位の打率.315

古田は社会人1年目で阿部はプロ1年目。

城島、會澤、甲斐、坂倉はプロ5年目。會澤と甲斐が普通で城島がレアケース。

1994年のドラフト1位で城島は「裏口入団」気味にダイエーに入団。根本陸夫が強引に獲得したため、後に「プロ志望届」導入のきっかけとなりました。

当時のダイエーの正捕手は吉永幸一郎と坊西浩嗣。世代交代が急務の中で20歳の城島健司と26歳の内之倉隆志が正捕手の座を争っていました。

城島健司23歳のシーズンは26年ぶりのリーグ優勝。ダイエーとしては初優勝でした。城島は初めてベストナインとゴールデングラブ賞。さらに工藤公康との最優秀バッテリー賞にも輝きました。

城島の5年目はとても華やかでした。

坂倉も捕手で出てたら城島と同じ「捕手三冠」を穫れてたと思いますよ。

打撃成績も立派ですが、私が打撃以上に高評価しているのは坂倉の守備なんですよね。

データ重視の時代で、彼は非常によくバッターを観察できています。紙切れより自分の感性を信じるキャッチャー。

九里や玉村が「内角ズバー」で多くの見逃し三振を取れたのも坂倉の観察眼によるところが大きい。

三連覇時代のアツでさえ、坂倉ほどの内角攻めはしていなかったと思います。

現代の打者は外角低めを本当によく見極めます。んで審判も外角低めをなかなかストライク取らないです。こうして先発投手の球数と四球の数が増えてルーズベルトゲームになり、試合が盛り上がるのです。

坂倉は内角内角で追い込んで内角で仕留めます。サインのテンポも良く、時短です。審判にきわどいコースをストライク判定してもらう技を坂倉は知っている。フレーミングなんかじゃありません。球辞苑でも言ってましたが「審判も人の子」なのです。

ニックネームがサクだけにサクサクと試合が終わり、2時間30分で完封勝利。これではビールもカープうどんも売れないでしょう。だが私は坂倉をスタメン捕手で使いたいのですよ。

栗林との関係

昨日、佐々岡が「来季も抑え栗林でスタートする」とコメントしました。サンスポ

当然です。まずは栗林がポールポジション。

その栗林がプロでやっていくための自信を得た試合として、よく語られるのが2021年3月21日(日)のオープン戦ソフトバンク戦。この試合で9回のマスクをかぶっていたのは坂倉将吾でした。

3/19(金)に佐々岡が「今年のクローザーは栗林で行く」と明言した翌々日、栗林は9回のマウンドに立ちました。

そこで2塁打を浴びるなど2死満塁。1点リード。打者周東。フルカウント。

坂倉は2球連続ストレートを要求。ファールとファール。

8球目、低めフォークを要求するが抜けてストライク。見逃し三振。

当時、この球は狙って投げたのか、タマタマの球なのか議論が別れました。

私の結論マグレです。たまたま良いとこに行っただけ。

しかしこの見逃し三振で栗林が「抑えのコツ」を掴んだことは間違いないでしょう。坂倉大好き達川光男もテレビでそう言ってたし。

この時の周東と坂倉の心理がどうだったかは忘れましたが、坂倉には「まっすぐが危険でフォークが安全」という根拠があったと思います。昨日の球辞苑で鳥谷敬は「根拠を持った見逃し三振」と言い、黒田博樹は「最も安全なアウトが見逃し三振」と言いました。

栗林は自信を得て、坂倉将吾は確信を深めた試合だったと思いますね。

その他のレジェンド6年目

だから来季の主戦捕手は坂倉将吾に限るわけです。

さっき出した「23歳の捕手一覧」になぜ谷繁元信伊東勤の名前がないか、おわかりでしょうか?

批判覚悟で申し上げますと、

坂倉にとって谷繁と伊東は

眼中にないからです。

守れる名捕手は普通です。坂倉は「打って守れる名捕手」を目指しているのです。打つだけも守るだけもアウトオブ眼中。両方やれるのが坂倉です。

サード練習は疲労回復と気分転換でしょう。

5番キャッチャーフル出場を解禁してもイイんじゃないか?23歳の城島健司はやりました。

ただ坂倉の下半身に不安があることも事実。完治してないなら内野との併用もやむを得ません。

言いたかないですが、前田智徳がアキレス腱を切ったのはプロ6年目24歳のシーズンでした。

50歳の前田は冗談交じりに

「あの時、無理しなきゃ良かったなーw」

と言ってます。捕手坂倉の無理なフル出場も困りものです。